手作りフェルトで彩り生活

TOP > フェルトについて学んでみよう > 毛氈は、実はフェルト

毛氈は、実はフェルト

 よく、お茶会などで使用されている赤い絨毯のことを、毛氈(もうせん)といいます。和菓子屋さんなどでも使われていることがありますね。茶席などにあまり縁のない方はちょっとイメージしにくいかも知れませんが、野点(のだて)の写真などは目にしたことがあると思います。野点の席では、野点傘とセットで、必ずといってもいいほど、床几台の上には赤いカーペットが敷かれています。それが毛氈です。
 また、時代劇でのお話ですが、茶店ではこの赤い毛氈と日傘がよく登場します。ただ、実際に江戸時代の、庶民向けのオープンカフェで頻繁に緋毛氈が使われていたというのはちょっと無理があります。江戸時代には、中国だけではなくヨーロッパなどからも毛氈が数多く輸入されるようになりましたが、当時はまだまだ富裕層向けの商品でした。ですが、毛氈を知らない人でも、なんとなくイメージがわくのではないでしょうか。ちなみにお雛様のひな壇を飾る赤い布は、今はフェルトではないものが多く出回っていますが、もともとはこの緋毛氈が使われるのが普通でした。

 この、畳サイズの赤い毛氈は、とくに緋毛氈と呼ばれ、茶席以外にも寺院の廊下などに使用されています。この毛氈、実はフェルトなのです。毛氈は、先ほども紹介したようにモンゴルで作られはじめ、それがシルクロードを経由して中国に伝わり、さらに新羅を通して日本にも伝わってきたものです。なぜ赤なのかというと、日本では「赤」は晴れの象徴であり、おめでたい色として好まれてきたからです。日本だけではなく、中国でも赤はめでたい色として好かれていますよね。もともとは高価な輸入品であったため、特別な日に用いるものとして特別視され、赤い緋毛氈が好まれるようになったのです。

 といっても、日本でだけ緋毛氈が好まれた訳ではありません。緋毛氈は、もともとはケルメスというカイガラムシの雄から採れる染料で染められていたものです。ですが、このケルメスは採取しにくい上に染色が難しく、ケルメスの原産地である地中海周辺でも貴族階級の一握りの人でなければ使えない色でした。そのため、赤=高級というイメージになり、ケルメス以外の方法で染められた赤もどんどん普及していきます。世界各地で、赤という色は好まれていたようです。

 もちろん毛氈は赤い色だけではありません。赤の次にメジャーなのは紺色でしょうか。その他にも紫色や緑色などがあります。今は染色技術が発達していますから、もちろんどんな色でも染めることは可能なのですが、毛氈として販売されているフェルトは、カラーバリエーションに乏しいのが現実です。なぜなら、敷物としては他に織物のカーペットがありますから、フェルトで作られた毛氈を使う人というのは「限られた場面に用いるための物」として利用する事がほとんどだからでしょう。