手作りフェルトで彩り生活

フェルトの起源

 フェルトの歴史は古く、紀元前の遺跡からすでにフェルトは発掘されていて、人類がいつからフェルトを利用してきたのかは分からないくらい歴史のあるものです。ですから、実はフェルトの起源がどこで、いつから始まったのかというのは、実は良くわかっていないのです。

 例えば、ノアの箱舟伝説を聞いた事のある人も多いのではないでしょうか。この中にもすでにフェルトが登場しています。一応ご存知でない方のために、あらすじを紹介してみます。ノアはある日、神様の声を聞きます。もうすぐ洪水が起こり、人は滅ぼされるというのです。ですが人間の中で神を信じているノアとその家族だけは助けてあげるので、箱舟を作りなさいと命じるのです。もちろん神を信じるノアは、周囲の正しくない(神を信じない)人々に嘲笑われながらも、神に命じられたとおり箱舟を作り始めます。そしてようやく箱舟が完成すると、どこからともなく動物達が集まり、ノアは家族と、全ての動物達を箱舟に乗せます。すると40日間に渡る大洪水がおき、箱舟に乗り込んだもの以外、全ての命が失われてしまいました。そうしてようやく水が引き、大地に降り立ったノアたちは、二度と神に滅ぼされるような世界にはしないと誓うのです。旧約聖書「創世記」が有名ですが、それ以前のギルガメシュ叙事詩にもほぼ同じ話が登場しています。ギルガメッシュの場合は唯一神ではありませんので、人を滅ぼそうとする神に嘆き、人間を助けようとする神様が船の作り方を教えることになっています。どこにフェルトが登場するのかというと、箱舟の船底に敷かれた羊毛が、動物達に踏み敷かれていつの間にかフェルトになったというのです。伝説の中のお話ではありますが、これがフェルトの起源のようです。

 考古学的には、アルタイ地方(今のロシア)にある、パジリク古墳群の遺跡の中から発掘されたものが最古のもので、靴下などに加工されたものが見つかっています。このフェルトが、大体紀元前、4・5世紀ごろのものとされています。パジリク古墳群に近いモンゴルはもちろんの事、各地でフェルトは利用されてきたようです。最初は羊やラクダなどの毛が、偶発的にカーペット状に固まったことでフェルトは作られたのです。