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フェルトペンの発明

 フェルトペンは、文字通り、フェルトをペン先に用いたペンの事です。油性マジックなどが、日本では知名度も高く代表的なフェルトペンです。なんとなくイメージできるでしょうか? フェルトペンが考え出されたのは、18世紀後半のイギリスといわれています。もともと貴族達は、装飾用として使われていた敷物や壁掛けなどのフェルトを切り取って、自作のフェルトペンを使うのが流行していたと言われています。それがいつしか庶民にも広まり、フェルトペンは一般的なペンとして普及したようです。ただ、当時は現在のフェルトペンのようなものではなく、インクを染み込ませながら使っていました。

 フェルトペンは、毛細管現象という液体が細い管の中を上昇していく現象を利用したものです。例えばティッシュなどでもいいのですが、液体に着けるとどんどん液体が染み込んで登っていきますよね。この現象です。毛細管現象によって、インクが吸い出され、結果インクがなくなるまで書き続けることができるのです。

 フェルトペンの特徴を知るために、ちょっと他の筆記具と比較してみましょう。ボールペンは普通、上を向けて書くことができません。現在では上向きで筆記する事も可能なボールペンも販売されていますが、それらを除き、ボールペンが上向きで筆記できないのは、地球に重力があるからです。ペン先を上に向けると、インクそのものが重力に従ってペン軸側に下がってしまうため、従来のボールペンでは上向きでの筆記が難しかったのです。ですがフェルトペンは、毛細管現象を利用しているため、上向きでも筆記することができます。最近見かける、上向きでも書くことができるボールペンは、インクの入っているボールペンの内部を加圧して、インクを押し出すという構造になっています。ですからボールペンでも、上向きで使えるものがあるのです。それではフェルトペンはどうでしょう。ボールペンと違い、毛細管現象は重力に逆らって、上にでも下にでも伸びていきます。ですからフェルトペンは、通常のボールペンのように上向きに筆記すると書けない、という事がほとんどないのです。

 例えば日本で作り出された、ぺんてるのサインペンはフェルトペンの一種ですが、とても優秀なものです。フェルトペンはもともと重力に影響されにくいのですが、ぺんてるのサインペンは無重力空間であっても筆記可能なのです。そのためぺんてるのサインペンは、NASAの公式筆記具として採用されたという、誇らしい歴史を持った筆記具なのです。ちなみに、フェルトペンが使われるまでは、ロシアもアメリカも、宇宙では、えんぴつを使っていたそうです。

 このフェルトペンは、日本ではマジックインキなどが有名です。油性マジックは、今はどこにでもある、どの家庭にも一本は常備さている筆記具です。ただ、現在は多孔質で毛細管現象を利用する方法は、フェルトではなく化学繊維でも可能なため、毛を使ったペンは少なくなっています。筆代わりにつかう筆ペンも、フェルトペンの一種ですが、こちらは穂先に毛筆を使用している商品も存在します。